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MIXの効果

ベテラン教師が異口同音に「どうも子どもたちがわからなくなった」「教育に自信がない」という感慨をのべている。
例えば、佐山喜作氏は中学校の教師を三十数年続けた方で、一九六三年には『中学生』いう岩波新書を出しています。
この佐山氏が最近もう一冊、中学生についての本を出していますが、この二冊の本が非常に違うのです。
六〇年代の初めに書かれた新書は、「伸びゆく子どもたち」書き出されていたのにたいして、八一年に出した。本では「目の前の中学生をどう理解してよいのかわからなくなった
三〇年前比べてはるかに豊かになったはずの日本で子供たちを育て教えることが、どうしてこんなに苦悩の多い仕事になってきたのだろうか」というふうに書かれています。
もうひとつ例をあげます、私たち一緒に民間教育運動をやってきた宇野一いう方がいます。
三〇年間高校の教師をし、最後は校長で一九八二年にやめたのですが、新聞のインタビューで教壇を去る感慨を聞かれ、「寂しいいうか、自信を失った満たされない気持です。
俺たちのやってきたこは何だったのかいうことです。
私たちが考えていた通りに教え子が育っていれば、日本は今のような状態にはなっていないと思いますよ」というふうに答えています。
三〇年勤めあげたベテラン教師が、教壇を去る際の感慨-それが、長年勤めた教壇を去る寂しさいうごく自然のものではなくて、むなしい思いに結びついているというこに私はショックを受けました。
自信喪失の現われ方もさまざまです。
最近のユースで、新潟の中学校の教師が、いわゆるツッパリ生徒に金を渡して「暴れないでくれ」頼み、何回にもわたって一万数千円を渡していたいうことが報道されました。そのツッパリ少年のひとりは「もらった金は仲間四人で飲み食いに使った。金をくれと言ったことは一度もない。受け取る自分もいけないが、渡す先生にも腹が立った」と、答えているのです。
この先生も生活指導担当で、五四歳です。
この行為自体を責めるこは簡単なのですが、私はそれ同時に、教師が教育に自信を失ってしまっているという、そのことを強く感じました。
また、一昨年、東京中野区の富士見中学校で鹿川君がいじめの果てに自殺しました。
新開でも大きく取り上げられました。が、その担任の先生が鹿川君の「葬式ごっこ」に署名していたこでいっそう大きな事件になってしまいました。
担任の教師も五〇代の半ばをすぎたベテランで、教育にも熱心な先生だったのです。
鹿川君にたいするいじめについては日頃心をいためて響いた
いじめられている鹿川君の校内靴が便所に捨てられていたのを拾いあげて、洗ってやりながら、「きみ、もう学校を転校する以外にないんじゃないか」という言葉もかけていたその先生が、他方で「葬式ごっこ」に署名していたのです。
この「葬式ごっこ」に署名した。あるいはお金を渡して「騒がないでくれ」と言った、その時の教師の気特は無惨であり、それは教育に自信を失っていることの表われだ思います。
こういう事件は新聞沙汰になるいう意味では、例外的な事例であるも言えます。が、しかし日本の教育問題の深刻さを示すものして、その意味を読み取らなければならない思うのです。
実際統計的に見ましても、日本の教育の状況はけっしてよくはないのです。
例えば学校嫌いを理由する長期欠席者の数、これは文部省の統計ですが、一九七五年を一〇〇する、八六年では中学校が三八五という指数になっています。
つまりこの約十年間に長期欠席者は四倍近くなっています。
小学校は一五六で一・五倍くらいに増えているのですが、中学校の学校嫌いを理由する長期欠席者が非常に増えているというのが実情です。
あるいは、総理府の青少年対策本部による国際比較の調査(一九七九年)に、「担任の先生が好きである」という項目があり、アメリカ・イギリス・フランス・タイ・韓国・日本を比較していますが、一〇歳から一五歳年齢が高くなるにつれて、急速に日本では数値が落ちているのです。
その他の国は大体九〇%から八〇%くらいのころでかたまって、そして若干年齢が高くなるにつれて下降している、つまり「好きでない」というのが増えているのですが、日本はその下降がきわたっています。
一〇歳で八〇%が「好き」言っていたのが、一五歳では六〇%に落ちている
あるいは「先生を尊敬しているかどうか」という問いに対して、これも日本は一〇歳から一五歳にかけての数値がぐん落ちています。
見方によっては日本の教師ほど教育熱心な教師はないいうふうにも見えます。が、他方で子どもたちに嫌われ、あるいは信威されてない、尊敬されてないいうこともまた、国際的に見て顕著なのです。
教育や子育ての苦労は、今日では全世界的な問題であり、欧米諸国も日本の教育はうまくいっているのではないかいうこで、使節団などをずいぶん送ってきています。
日本の経済成長の秘密は教育がうまくいっているからにちがいないいうのがその理由ですが、しかし先の国際此較からもうかがえるように、日本の学校が何かギスギスしていて教師子どもの信頼関係が失われてしまっていることを、まず指摘しておかなければならない思います。
こういう状況を子どもたちの側からみれば、「センコウなんて信頼できるか」ということになるのでしょうし、ツッパリ少女に長く接してその子の本音を聞いたドキュメンなどを見ます。「自分には居場所がないの」、そして「もう先が見えているじゃないの」いっています。
「先が見えている」ということと「自分の居場所がない」ということの二つの言葉は、今の学校秩序、競争選別の中で脱落していく子どもたちの共通の気持だろう思うのです。
自分の個性に出番がないいういらだちの中での自己主張がツッパリにもなっていくし、逆に自己肯定の弱さが登校拒否にもなっていくように思えます。他方で、いわゆる受験競争の階段を勝ちぬきながら昇っていったエリートた柏別品隣のちはどうなのでしょう
今日は、例えば登校拒否で悩んでいる子どもやツッパリ少年の話よりも、むしろ、いわゆる「できのいい子」いわれている子どもたちの問題に焦点を当てて皆さん一緒に考えてみたい思っています。
いわゆるエリートの卵たちの育ち方もまた、大きな歪みをもっているように私には思えます。
これは、東大生をみても、幼児期に始まる受験レースの勝者として、やはり残念ながら冷酷で倣慢なパーソナリティの持ち主が増えている言っても言い過ぎではないのではないか思います。
同時にまた、現状肯定的で問題意識が希薄になっているのも最近の学生の特徴です。
私ももう二十数年教壇に立ち、くに教養学部に入ったばかりの学生に一般教養の教育学を教えていて、確かに私たちの学生時代、そして私が教師になったばかりの頃は最近の学生のものの考え方や感じ方が少しずつ変わってきているのではないかいう思いを持っています。
共通して言えるこは、かつて若者が持っていた批判意識が弱くなっているし、物事を歴史的に見ようする思考が弱くなっているように思えます。
数年前に東大の経済学部を定年でおやめになった犬内力先生が、大学を去るき、こういう言葉を残しました。
「現在の学生は歴史意識を欠き、問題意識が欠如している。このままでは日本の学問の将来が案ぜられる」このことば自体、新聞などでも報道されて話題になりました。
医学部志望(理Ⅲ)の学生については、大学の中でもいろいろ話題になることがあります。

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